113番元素「ニホニウム」の発見に携わった森本幸司博士から高校生が直接学ぶ
IWATSUKI HIGH SCHOOL × RIKEN
113番元素「ニホニウム」の発見に携わった
森本幸司博士から高校生が直接学ぶ
岩槻高校生12名が理化学研究所・和光地区を訪問
― ニホニウムを生んだ研究現場で、加速器科学と最先端研究を体感 ―
埼玉県立岩槻高等学校(埼玉県さいたま市)は、 2026年8月27日(木)、理系分野や科学技術に関心を持つ希望生徒12名を対象に、 埼玉県和光市の理化学研究所(RIKEN)和光地区で 研究施設見学を実施しました。
今回、生徒たちに113番元素「ニホニウム」について直接講義をしてくださったのは、 理化学研究所 仁科加速器科学研究センター 超重元素分析装置開発チーム チームリーダーの森本幸司博士です。
森本博士は、2004年7月23日に113番元素の最初の合成が確認された際、 計測画面に現れたデータに気づき、研究チームへ知らせ、 その後の解析にも携わった研究者です。 生徒たちは、周期表に新たな元素が加わることにつながった研究の当事者から、 新元素探索の難しさや、実際の研究現場について直接話を聞く 貴重な機会を得ました。
さらに、ニホニウム発見に関わった重イオン線形加速器「RILAC」をはじめ、 RIビームファクトリー(RIBF)、脳神経科学、 3次元蛍光イメージング、レーザー顕微鏡など、 分野を越えた最先端科学にも触れました。
113番元素「ニホニウム」発見の地、理化学研究所和光地区を訪問した岩槻高校の生徒たち。
ニホニウム発見の瞬間を知る研究者から、高校生が直接学ぶ
今回の見学の大きな特色の一つが、 理化学研究所 仁科加速器科学研究センター 超重元素分析装置開発チーム チームリーダー・森本幸司博士から 生徒たちが直接講義を受けたことです。
森本博士は、日本発・アジア初の新元素となった 113番元素「ニホニウム(Nh)」の発見に携わった研究者です。
2004年7月23日、理研で113番元素の最初の合成が確認された際、 森本博士は計測画面に現れたデータに気づき、 研究チームへ知らせました。 その後、得られたデータの解析にも携わっています。
生徒たちは今回、 教科書や周期表の中で見る「ニホニウム」の発見に実際に関わった研究者から、 新元素がどのように生み出され、どのように発見へとつながったのか を直接学びました。
研究成果について本や資料から知るだけではなく、 その研究を進めてきた研究者本人の言葉に触れる。 高校生にとって、科学研究をより身近なものとして感じる貴重な時間となりました。
仁科加速器科学研究センターで、ニホニウムの発見や加速器について説明を受ける生徒たち。
THE MOMENT OF DISCOVERY / JULY 23, 2004
113番元素の最初の合成を示すデータに気づいたのが、森本幸司博士でした。
2004年7月23日、理研の計測画面に113番元素の合成につながるデータが現れ、 森本博士がそのデータに気づき、研究チームへ知らせました。
ニホニウムを生んだ加速器研究の現場へ
講義の後、生徒たちは 理研重イオン線形加速器「RILAC(ライラック)」 を見学しました。
RILACは全長約40mに及ぶ重イオン線形加速器です。 原子核を高いエネルギーまで加速するための装置で、 113番元素「ニホニウム」の合成実験でも重要な役割を果たしました。
ニホニウムの合成実験では、 亜鉛の原子核を光速のおよそ10%まで加速し、 ビスマスの原子核へ衝突させました。
高校の教科書では小さな記号として表される「原子核」。 しかし、その研究のために実際には巨大な加速器、 多数の電磁石、検出器、制御機器が必要になります。 生徒たちはそのスケールを間近で体感しました。
ニホニウム研究にもつながった加速器研究の現場。大型設備を間近で見学しました。
113th ELEMENT / NIHONIUM
113番元素1個をつくるために必要だった原子核の衝突は、平均約100兆回。
極めて低い確率の現象を捉えるため、 長期間にわたる実験と研究・技術の積み重ねが続けられました。
原子核は、どうやって加速されるのか
生徒たちは、 RIビームファクトリー(RIBF)の 全体像についても説明を受けました。
RIBFでは複数の加速器を組み合わせ、 原子核を段階的に加速して研究に利用します。
施設模型を見ながら、 原子核がどのように加速され、 どのような経路を通り、 研究装置へ届けられるのかを学びました。
RIビームファクトリーの模型を使った説明。巨大研究施設の全体像を学びました。
加速器科学から脳神経科学へ。今度は「光」で脳を見る
見学の後半では研究分野を大きく変え、 文部科学省 科学技術教育アドバイザーでもある 河野弘幸博士から、 「3次元蛍光イメージングで脳の深部を観察」をテーマに 講義を受けました。
蛍光タンパク質などを利用して、 神経細胞や脳内の構造・ネットワークを可視化する研究について学習。 生徒たちは、目では直接見ることのできない生体内部を 「光」によって観察する研究の世界に触れました。
3次元蛍光イメージングを利用した脳研究について学びました。
実際の研究室へ。レーザー顕微鏡を間近に見る
講義の後、生徒たちは研究室へ移動し、 レーザー顕微鏡システムなど、 実際の研究に使用される設備を見学しました。
顕微鏡だけではなく、 レーザー、光学機器、コンピュータ、 多数の制御装置が組み合わされた研究環境を前に、 生徒たちは研究者の説明に熱心に耳を傾けました。
レーザー、顕微鏡、光学機器など、実際の研究設備を間近で見学。
実験だけではない。最先端研究を支える「計算」と「データ」
見学では、 HOKUSAI SailingShip(HSS)に関連する設備にも触れました。
最先端科学は、巨大な実験装置だけで完結するものではありません。 研究で生まれるデータを保存し、 解析し、次の研究へ生かしていくための 計算・情報基盤も重要な役割を担います。
加速器科学、超重元素、脳神経科学、光学、データ科学。 一日の中で複数の分野に触れることで、 現代の科学研究が専門分野を越えた連携によって支えられていることも学びました。
最先端研究を支えるデータ・計算基盤にも触れました。
見学後の生徒の声
「実際に自分の目で研究所を見て研究所がこんなにも大きくてたくさんの施設が整ってるとすごく憧れるような気持ちになりました。」
「もっと理科について、知りたい気持ちになりました。」
「ニホニウムの存在は前から知ってはいましたが今回見学に行くまでどのように作られたかなどは全く知っていなかったので今回作る過程や機械を見れてよかったです。」
「研究所に対するいわゆる偏見が変わりました。」
※参加生徒の感想から原文のまま抜粋
学校の外にある「本物の学び」と出会う
今回の見学は、 理系進学を考える生徒だけに特定の進路を示すためのものではありません。
実際に参加した生徒の中には、 文系を選択している生徒もいました。 最先端の研究施設や研究者との出会いを通して、 これまで知らなかった分野に興味を持つことも、 高校時代の大切な学びの一つです。
「これは何に使うのだろう」 「なぜこうなるのだろう」。 実物を目の前にすることで生まれる疑問や好奇心は、 教室での学習をさらに深めるきっかけになります。
また、研究者本人から話を聞き、 実際の研究室や研究施設を見ることは、 大学での学びや研究職を含めた将来の進路を より具体的に考える機会にもなります。
岩槻高校では、 校内での授業だけでなく、 大学・研究機関・地域社会など、 学校の外にある「本物」と出会う教育機会を 今後も大切にしていきます。
「113番元素ニホニウム発見のまち」和光市。街中には元素をモチーフにしたプレートも設置されています。
実施概要
埼玉県和光市
理化学研究所 仁科加速器科学研究センター
超重元素分析装置開発チーム チームリーダー
河野 弘幸 博士
文部科学省 科学技術教育アドバイザー
- 113番元素「ニホニウム」に関する講義
- 仁科加速器科学研究センターの見学
- 理研重イオン線形加速器RILACの見学
- RIビームファクトリー(RIBF)の学習
- 3次元蛍光イメージング・脳神経科学の講義
- レーザー顕微鏡関連研究設備の見学
- 研究データ・計算基盤に関する学習
今回の見学にあたり、貴重な研究施設をご案内いただき、 高校生にも分かりやすく丁寧にご説明くださった 理化学研究所の皆様に、心より御礼申し上げます。